ファーストアルバムには、カバー曲が1曲入っている。「新・十勝招き節」だ。
この曲は今から約85年前に佐藤霜月(さとう そうげつ)さんによって作曲された。
1921年、清水町で雑穀の仲立店と並行して、蓄音器やレコードを扱う楽器店を営んでいた霜月さんは、
自身でもオルガンやマンドリンを独学で弾き、作曲活動を行っていた。
NHK帯広放送局が開局した際には作曲した「狩勝おろし」が放送され、帯広で初めての”のど自慢大会”では審査員の依頼もあったという。
そんな霜月さんが十勝を盛り上げるために作曲したのが、「十勝招き節」だ。
当時の十勝観光協会の選歌にもなっている。
実は霜月さんはTAUのボーカル、流の祖父にあたる。
時には売り物を担いで旅をしながら音楽を続けていた祖父を、全国を旅をしながら歌を歌い続けている流が(記憶はほとんどないにせよ)何となく慕っているのは自然なことだと思う。
レコーディングでは十勝の観光大使を務めている三味線・唄の加藤恵理奈さんに参加してもらった。
ゲストとはいえ、もう一人の重要なTAUメンバーだ。
この曲を録音している時、常に霜月さんの存在を僕は感じていた。
霜月さんが納得するアレンジにしたかったし、みんなでワイワイとコーラスをしている時、
きっと喜んでもらえるだろうという確信があった。
TAUのアルバムは、霜月さんが残した意思や、空のどこかからの見守りによって、すいすいと
風のない湖面を漕ぐボートのように、進んでいった。そんな気がする。
85年前の作品を、現在を生きている僕らがもう一度記録する。
コーラスを録音し終えた時、僕はみんなに向かってこう宣言した。
この曲のタイトルは、「新・十勝招き節」にしよう!
佐藤霜月(1903 - 1976)